矛と盾の戦い―――今季未だ無失点のハルシティ
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9月12日(土)、チェルシーはスタンフォード・ブリッジでハルシティを迎える。
この試合を「強豪チェルシーに、昇格組のハルが挑む」と考えると、少しだけ見え方が違ってくる。
試合前の順位は、ハルが3位、チェルシーが4位。
ハルはここまで3試合で2勝1分、勝点7。しかも3得点0失点。
一方のチェルシーは2勝1敗、勝点6で、8得点7失点。
つまり、数字だけを見れば、スタンフォード・ブリッジに乗り込むのは「追う側」ではない。
むしろ、現時点ではハルのほうが上にいる。
・チェルシー対ハルシティ
9月12日(土)23時 スタンフォード・ブリッジ
ハルシティ(3位・勝点7)
今季 3試合2勝1分・3得点0失点
第1節 ホームでマンチェスターユナイテッドに2-0(8/22)
第2節 アウェイでコヴェントリーシティに1-0(8/29)
第3節 ホームでアストンヴィラと0-0(9/5)
昨季 チャンピオンシップ6位からプレーオフで昇格
チェルシー(4位・勝点6)
今季 3試合2勝1敗・8得点7失点
第1節 アウェイでフラムに3-2(8/24)
第2節 ホームでブライトンに4-3(8/30)
第3節 アウェイでアーセナルに1-2(9/6)
そんなハルを率いるヤキロヴィッチ監督が、
試合前会見で何度も口にしたのは、自分たちの強さではなく、チェルシーの強さだった。
そして、その姿勢が最もはっきり表れたのが、この言葉だった。
「彼らは間違いなくトップ4に入る」
一見すると、相手を称賛しただけの発言に見える。
でも、この会見を最初から聞いていくと、少し違った印象を受ける。
会見の最初に聞かれたのは、チームニュースだった。
そこでヤキロヴィッチ監督は、欠場者として守田英正とチャーリーヒューズの名前を挙げた。
「守田とチャーリーヒューズは引き続き欠場です」
守田について、ここから復帰時期や状態の詳しい説明が続くわけではない。
その後の会見でも、守田の名前が再び出てくることはなかった。
守田にとって、今季プレミアリーグで出場したのは1試合。
8月29日のコヴェントリー戦で先発し、46分に交代している。
第1節と第3節には出場記録がない。
だからこそ、今回の会見で「守田はいつ戻るのか?」という情報がもう少し出てくるのかと思っていた。
しかし、実際には開始直後の一言だけ。
そこから会見は、完全にチェルシーの話へ移っていった。
・守田英正(31歳・ハルシティ・背番号5)
今夏 スポルティングからハルシティへ
今季 プレミアリーグ1試合(先発1)
8月29日 コヴェントリー戦に先発、46分で交代
第1節と第3節は出場の記録なし
昨季 スポルティングで42試合・1得点4アシスト
プリメイラリーガ31試合/チャンピオンズリーグ11試合
さらに面白かったのが、会見の2問目だ。
記者は、今シーズン初めて、敗戦から立ち直らなければならない試合ですよね、と聞いている。
ところが、ハルのリーグ戦だけを見ると、ここまで敗戦はない。
マンチェスターユナイテッドに2-0。
コヴェントリーに1-0。
アストンヴィラと0-0。
3試合を終えて2勝1分、無失点。
つまり、この「敗戦」はリーグ戦ではない。
カラバオカップのサンダーランド戦である。
一方、監督はその質問を否定することなく、
「敗戦はつきもの。今後も負けることはありますし、それは普通のことです」
と答えている。
そして後半では、
「勝点7で、1点も取られていない」とも話す。
リーグとカップ。
この2つの結果を分けて考えると、監督の言葉は矛盾しない。
むしろ、ここには今のハルが抱えている二つの顔がある。
リーグでは、まだ無敗。
一方で、敗戦を経験し、それを受け止めて次へ進まなければならない。
そんなタイミングで、次の相手がチェルシーだった。
この会見で一番興味深かったのは、やはりここだと思う。
記者が「4位対3位」「チャンピオンズリーグ争い」という言葉を出す。
普通なら、3位にいる側として、我々もその争いに加わっていると話しても不思議ではない。
ところがヤキロヴィッチ監督は、ほぼすべてをチェルシーの評価へ変えていく。
「まだ3節しか終わっていない」
「昨日のチェルシーを見た」
「攻撃陣が非常に強い」
「素晴らしい監督がいる」
そして、チェルシーが負けた試合であるアーセナル戦にも触れた。
「チェルシーはアーセナル相手にも互角に戦えることを示した」
そのうえで出てきたのが、
「彼らは間違いなくトップ4に入る」
という言葉だった。
ここが面白い。
今、3位にいるのはハルだ。
それでも監督の頭の中では、トップ4に入るべきチームとしてチェルシーを見ている。
自分たちの順位を強調するのではなく、相手の実力を認める。
「我々は3位だから」という話ではなく、
チェルシーはトップ4に入るほどのチームだ、という方向に話を持っていった。
謙虚、と一言で片付けるのは少し違う気がする。
むしろ、自分たちの現在地を過大評価していないのだと思う。
その姿勢は、守備について聞かれた場面でも出ていた。
これまでの素晴らしい守備成績について、具体的にどんな準備をしているのか、と聞かれ、
監督は笑いながら、「それは秘密です」と答える。
その後も意志、努力、チーム全体で助け合うこと、といった説明はするものの、具体的なシステムの細部までは明かさない。
一方で、選手の話になると急に具体的になる。
その代表がソルバトーマスだ。
このあと本人への取材が控えているという前置きもあり、
記者から「彼が他の選手にはないものは何か」と聞かれると、監督はかなり細かく説明した。
左ウイング。
内側に入って10番の位置。
クロス。
セットプレー。
スピード。
そして守備での責任感。
「ソルバについては何の疑いも持っていない」
とまで言う。
自分たちの守備戦術については秘密。
でも、選手の長所については具体的に語る。
この対比も、今回の会見では印象に残った。
ここまでの3試合で、ハルはまだリーグ戦で失点していない。
一方、チェルシーは3試合で8得点。
攻撃力を考えれば、ハルの守備にとって大きなテストになる。
もちろん、3試合無失点だからといって、この先も無失点が続く保証はない。
まして相手はチェルシー。
だから今回の試合で一番見てみたいのは、シンプルにこれだ。
ハルの0失点は、チェルシー相手にも続くのか。
ヤキロヴィッチ監督は、マンマークだけではチェルシーの攻撃陣を止められないと言った。
「1人、2人、3人と抜いてくる」
だからこそ、全員でコンパクトに守る。
秘密だという守備の中身が、実際のピッチでどんな形になるのか。
3位のハルが、4位のチェルシーを相手にどこまで戦えるのか。
そして試合後、ヤキロヴィッチ監督の彼らはトップ4に入るという言葉が、どんな意味を持つのか。
スタンフォード・ブリッジで答えが出る。