Kickoff Talk は 2026年10月8日(木)をもって終了します

ご利用いただき、ありがとうございました。

← 記事一覧へ

矛と盾の戦い―――今季未だ無失点のハルシティ

9/11

「彼らは間違いなくトップ4に入る」

So for me, they will be in top four 100% because they have a quality.

(動画からの引用・訳 / )

Chelsea (A) | Sergej Jakirović's Live Pre-Match Press Conference

出典: Hull City / YouTubeで見る

9月12日(土)、チェルシーはスタンフォード・ブリッジでハルシティを迎える。 この試合を「強豪チェルシーに、昇格組のハルが挑む」と考えると、少しだけ見え方が違ってくる。 試合前の順位は、ハルが3位、チェルシーが4位。 ハルはここまで3試合で2勝1分、勝点7。しかも3得点0失点。 一方のチェルシーは2勝1敗、勝点6で、8得点7失点。 つまり、数字だけを見れば、スタンフォード・ブリッジに乗り込むのは「追う側」ではない。 むしろ、現時点ではハルのほうが上にいる。 ・チェルシー対ハルシティ  9月12日(土)23時 スタンフォード・ブリッジ  ハルシティ(3位・勝点7)   今季 3試合2勝1分・3得点0失点   第1節 ホームでマンチェスターユナイテッドに2-0(8/22)   第2節 アウェイでコヴェントリーシティに1-0(8/29)   第3節 ホームでアストンヴィラと0-0(9/5)   昨季 チャンピオンシップ6位からプレーオフで昇格  チェルシー(4位・勝点6)   今季 3試合2勝1敗・8得点7失点   第1節 アウェイでフラムに3-2(8/24)   第2節 ホームでブライトンに4-3(8/30)   第3節 アウェイでアーセナルに1-2(9/6) そんなハルを率いるヤキロヴィッチ監督が、 試合前会見で何度も口にしたのは、自分たちの強さではなく、チェルシーの強さだった。 そして、その姿勢が最もはっきり表れたのが、この言葉だった。 「彼らは間違いなくトップ4に入る」 一見すると、相手を称賛しただけの発言に見える。 でも、この会見を最初から聞いていくと、少し違った印象を受ける。 会見の最初に聞かれたのは、チームニュースだった。 そこでヤキロヴィッチ監督は、欠場者として守田英正とチャーリーヒューズの名前を挙げた。 「守田とチャーリーヒューズは引き続き欠場です」 守田について、ここから復帰時期や状態の詳しい説明が続くわけではない。 その後の会見でも、守田の名前が再び出てくることはなかった。 守田にとって、今季プレミアリーグで出場したのは1試合。 8月29日のコヴェントリー戦で先発し、46分に交代している。 第1節と第3節には出場記録がない。 だからこそ、今回の会見で「守田はいつ戻るのか?」という情報がもう少し出てくるのかと思っていた。 しかし、実際には開始直後の一言だけ。 そこから会見は、完全にチェルシーの話へ移っていった。 ・守田英正(31歳・ハルシティ・背番号5)  今夏 スポルティングからハルシティへ  今季 プレミアリーグ1試合(先発1)   8月29日 コヴェントリー戦に先発、46分で交代   第1節と第3節は出場の記録なし  昨季 スポルティングで42試合・1得点4アシスト   プリメイラリーガ31試合/チャンピオンズリーグ11試合 さらに面白かったのが、会見の2問目だ。 記者は、今シーズン初めて、敗戦から立ち直らなければならない試合ですよね、と聞いている。 ところが、ハルのリーグ戦だけを見ると、ここまで敗戦はない。 マンチェスターユナイテッドに2-0。 コヴェントリーに1-0。 アストンヴィラと0-0。 3試合を終えて2勝1分、無失点。 つまり、この「敗戦」はリーグ戦ではない。 カラバオカップのサンダーランド戦である。 一方、監督はその質問を否定することなく、 「敗戦はつきもの。今後も負けることはありますし、それは普通のことです」 と答えている。 そして後半では、 「勝点7で、1点も取られていない」とも話す。 リーグとカップ。 この2つの結果を分けて考えると、監督の言葉は矛盾しない。 むしろ、ここには今のハルが抱えている二つの顔がある。 リーグでは、まだ無敗。 一方で、敗戦を経験し、それを受け止めて次へ進まなければならない。 そんなタイミングで、次の相手がチェルシーだった。
この会見で一番興味深かったのは、やはりここだと思う。 記者が「4位対3位」「チャンピオンズリーグ争い」という言葉を出す。 普通なら、3位にいる側として、我々もその争いに加わっていると話しても不思議ではない。 ところがヤキロヴィッチ監督は、ほぼすべてをチェルシーの評価へ変えていく。 「まだ3節しか終わっていない」 「昨日のチェルシーを見た」 「攻撃陣が非常に強い」 「素晴らしい監督がいる」 そして、チェルシーが負けた試合であるアーセナル戦にも触れた。 「チェルシーはアーセナル相手にも互角に戦えることを示した」 そのうえで出てきたのが、 「彼らは間違いなくトップ4に入る」 という言葉だった。 ここが面白い。 今、3位にいるのはハルだ。 それでも監督の頭の中では、トップ4に入るべきチームとしてチェルシーを見ている。 自分たちの順位を強調するのではなく、相手の実力を認める。 「我々は3位だから」という話ではなく、 チェルシーはトップ4に入るほどのチームだ、という方向に話を持っていった。 謙虚、と一言で片付けるのは少し違う気がする。 むしろ、自分たちの現在地を過大評価していないのだと思う。 その姿勢は、守備について聞かれた場面でも出ていた。 これまでの素晴らしい守備成績について、具体的にどんな準備をしているのか、と聞かれ、 監督は笑いながら、「それは秘密です」と答える。 その後も意志、努力、チーム全体で助け合うこと、といった説明はするものの、具体的なシステムの細部までは明かさない。 一方で、選手の話になると急に具体的になる。 その代表がソルバトーマスだ。 このあと本人への取材が控えているという前置きもあり、 記者から「彼が他の選手にはないものは何か」と聞かれると、監督はかなり細かく説明した。 左ウイング。 内側に入って10番の位置。 クロス。 セットプレー。 スピード。 そして守備での責任感。 「ソルバについては何の疑いも持っていない」 とまで言う。 自分たちの守備戦術については秘密。 でも、選手の長所については具体的に語る。 この対比も、今回の会見では印象に残った。 ここまでの3試合で、ハルはまだリーグ戦で失点していない。 一方、チェルシーは3試合で8得点。 攻撃力を考えれば、ハルの守備にとって大きなテストになる。 もちろん、3試合無失点だからといって、この先も無失点が続く保証はない。 まして相手はチェルシー。 だから今回の試合で一番見てみたいのは、シンプルにこれだ。 ハルの0失点は、チェルシー相手にも続くのか。 ヤキロヴィッチ監督は、マンマークだけではチェルシーの攻撃陣を止められないと言った。 「1人、2人、3人と抜いてくる」 だからこそ、全員でコンパクトに守る。 秘密だという守備の中身が、実際のピッチでどんな形になるのか。 3位のハルが、4位のチェルシーを相手にどこまで戦えるのか。 そして試合後、ヤキロヴィッチ監督の彼らはトップ4に入るという言葉が、どんな意味を持つのか。 スタンフォード・ブリッジで答えが出る。
矛と盾の戦い―――今季未だ無失点のハルシティ