出番を待った男が、古巣の前に立つ
9/12
「彼がこのクラブに全てを捧げたことを、私は知っている」
I knew that he gave everything for this club
(動画からの引用・訳 / )
Coventry v Albion | Hürzeler pre-match press conference 🎙️
出典: Official Brighton & Hove Albion FC / YouTubeで見る
9月13日の日曜日、ブライトンはアウェイでコヴェントリー・シティと対戦する。
順位だけを見れば、10位のブライトンと20位のコヴェントリー。
今季3試合でブライトンは1勝1分1敗、8得点5失点。
一方のコヴェントリーは3連敗、0得点5失点と、
数字だけならかなり差があるように見える。
・ブライトン(10位・勝点4)
今季 3試合1勝1分1敗・8得点5失点
第1節 ホームでアストンヴィラに4-0(8/23)
第2節 アウェイでチェルシーに3-4(8/30)
第3節 ホームでリーズと1-1(9/5)
昨季 8位・勝点53・52得点46失点
・コヴェントリー・シティ(20位・勝点0)
今季 3試合3敗・0得点5失点
第1節 アウェイでアーセナルに0-3(8/21)
第2節 ホームでハル・シティに0-1(8/29)
第3節 アウェイでマンチェスターシティに0-1(9/5)
昨季 チャンピオンシップ1位で昇格
ただ、ここまでの試合を並べてみると、その印象は少し変わってくる。
ブライトンはアストンヴィラに4-0で勝ったあと、チェルシーに3-4、リーズとは1-1。
対するコヴェントリーはアーセナルに0-3、ハル・シティに0-1、そしてマンチェスターシティに0-1。
まだ勝点こそないものの、コヴェントリーは強豪相手に簡単に崩れているわけではない。
むしろ今回の会見でヒュルツェラー監督が強く警戒していたのは、
コヴェントリーの「守り方」だった。
シティ戦について、コンパクトに守り、多くのチャンスを与えなかったと評価。
そのうえで、カウンター、コーナー、スローインからチャンスを作り、
試合終盤になるほど前から激しくプレッシャーをかけてきたと語っている。
勝点0という数字だけでは分からない部分を、監督自身がかなり細かく見ていることが伝わってきた。
そしてブライトン側にも、少し気になる数字がある。
ここまで8得点を挙げているものの、選手による6得点の内訳を見ると、
ヒンシェルウッド、デカイペル、ヤルクイエ、グロス、ヴシュコヴィッチ。
得点した5人は中盤3人とDF2人で、前線登録の選手からはまだゴールが生まれていない。
しかも19歳のCB、ヴシュコヴィッチは3試合すべてに先発してリーズ戦で得点まで決めている。
・ブライトンの8得点(第3節まで)
ヒンシェルウッド 2 中盤
デカイペル 1 DF登録
ヤルクイエ 1 中盤
グロス 1 中盤
ヴシュコヴィッチ 1 DF・19歳
相手のオウンゴール 2
前線登録の選手 0
もちろん、まだ3試合しか終わっていない。
これだけでブライトンの攻撃に問題があるとは言えない。
ただ、8得点というリーグ最多タイの数字を「誰が取っているのか」まで見ると、
少し面白いねじれが見えてくる。
前線ではなく、本来は別の仕事を担う選手たちが得点を積み上げているからだ。
一方、コヴェントリーにはもっと大きな数字のねじれがある。
昨季のチャンピオンシップで46試合97得点。
1試合平均2.11得点でリーグ最多だったチームが、
プレミアリーグに上がった今季は3試合でまだ1点も取れていない。
しかも昨季の得点源がすべて消えたわけではない。
2桁得点を記録したライト、トーマス=アサンテ、シムズ、メイソン=クラーク、トープらは今もチームに残っている。
にもかかわらず、ここまでの3試合では得点が生まれていない。
・昨季97得点の得点源と、今季の出場
ライト 17得点 → 今季0試合
トーマス=アサンテ13得点 → 3試合1先発
シムズ 13得点 → 2試合1先発
メイソン=クラーク10得点 → 2試合2先発
トープ 10得点 → 2試合0先発
坂元達裕 7得点4アシスト → 1試合0先発
・得点0・失点5のチーム(第3節終了時)
コヴェントリー 勝点0(20位)
トッテナム 勝点1(17位)
アストンヴィラ 勝点1(17位)
それでもヒュルツェラー監督は、コヴェントリーの得点力不足について語ったわけではない。
むしろ口にしたのは、コンパクトさ、トランジション、セットプレー、フィジカル、1対1、そして試合終盤のプレス。
監督の言葉を追っていくと、コヴェントリーが今どこを武器にプレミアリーグで戦おうとしているのかが見えてくる。
そして、この試合で個人的に一番気になるのがカールラッシュワースだ。
ヒュルツェラー監督は、ブライトンを離れる際のラッシュワースについて
「このクラブのためにすべてを捧げた」と振り返った。
選手としてプレーしたい、次のステップへ進みたいと思うのは当然のことだとも話している。
この言葉を記録と一緒に見ると、より印象的になる。
ラッシュワースは2024-25シーズンにブライトンに所属していたが、ブライトンでの公式戦出場は0試合。
そのシーズンに出場したのはレンタル先のハル・シティでの2試合だった。
ところが翌シーズン、コヴェントリーへ移ると46試合すべてに先発。
チームのチャンピオンシップ優勝とプレミアリーグ昇格を、ゴールマウスから支えた。
そして今季も3試合すべてに先発している。
ブライトンで出番を待っていたGKが、今ではプレミアリーグに昇格したチームのゴールを守っている。
この試合は、そんなラッシュワースにとって古巣対戦になる。
・ラッシュワースの4シーズン
2023-24 スウォンジー 46試合46先発
2024-25 ブライトン所属(背番号39) 出場はハル・シティで2試合
2025-26 コヴェントリー 46試合46先発 → チャンピオンシップ優勝
2026-27 コヴェントリー 3試合3先発
ブライトンでの公式戦 0試合
そして「待っている」という意味では、ブライトンにも気になる選手がいる。
三笘薫は今季まだ出場がなく、監督によれば復帰は代表ウィーク明け以降になる見込み。
ルターも小さな足踏みがあり、週末に向けて復帰を目指している。
新加入のもう一人も全体練習に戻る予定で、こちらも週末の選択肢に入る可能性がある。
さらにパスカルストラウクについては、監督の言葉が少し違う。
彼は「いつでもプレーできる」状態にあるという。
それでも先発の構成については判断が必要で、プレーのスタイルや原則への適応を続けている。
同じ「出番を待っている選手」でも、その待ち方はまったく同じではない。
三笘は復帰を待っている。
坂元とストラウクは序列を待っている。
そしてラッシュワースは、かつて出番を待っていた場所を離れ、今度はその場所の前に立つ。
会見を聞いているだけなら、ブライトンが10位、コヴェントリーが20位という順位が中心に見える。
でも数字を少し掘ってみると、この試合には
「まだ出番がない選手」「出番を取り戻そうとしている選手」
「昇格を支えたが、上がった先でただ座り出番を待つ選手」「出番を待った末に別の場所で主役になった選手」がいる。
だから日曜日に一番見てみたいのは、コヴェントリーの今季最初の1点だ。
昨季97得点だったチームが、プレミアリーグで最初のゴールを誰によって生み出すのか。
そしてそのゴールを、ブライトンでは一度も公式戦のゴールマウスに立てなかったラッシュワースが、どんな表情で迎えるのか。
順位表だけでは分からない物語が、この試合にはある。