「降格する確率が0.05%ある」―――53.71%の優勝確率より、アルテタが見ているもの
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アーセナルは、リーグ開幕3連勝でサンダーランド戦を迎える。
昨季プレミアリーグを制したアーセナルは、ここまで3試合で3勝。
6得点1失点で、首位マンチェスターシティと勝点9で並び、得失点差でも並び、総得点で2位につけている。
一方のサンダーランドは1勝1分1敗、勝点4で12位。昨季は昇格初年度ながら7位に入ったチームだ。
さらにアーセナルは9月9日、チャンピオンズリーグ初戦でナポリにも1-0で勝利した。
・アーセナル(2位・勝点9)
今季 リーグ3試合3勝・6得点1失点
第1節 ホームでコヴェントリーに3-0(8/21)
第2節 アウェイでアストンヴィラに1-0(8/31)
第3節 ホームでチェルシーに2-1(9/6)
CL初戦 アウェイでナポリに1-0(9/9)
昨季 プレミアリーグ優勝(勝点85)
・サンダーランド(12位・勝点4)
今季 3試合1勝1分1敗・3得点3失点
第1節 アウェイでイプスウィッチに1-2(8/22)
第2節 ホームでフラムに1-0(8/30)
第3節 アウェイでブレントフォードと1-1(9/5)
昨季 7位・勝点54
そんな中で行われた9月11日のミケルアルテタ監督の会見。
記者からは、バロンドール、イングランド代表、
ウーデゴール、ハヴァーツ、負傷者、今夏の移籍、そしてサンダーランド戦について、実に多くの話題が投げられた。
でも、自分がいちばん気になったのは、
そこで何が話されたかだけではなかった。
むしろ、何が話されなかったのかだった。
会見には、いかにも今のアーセナルらしい数字が登場する。
記者が持ち出したのは、スーパーコンピューターによるプレミアリーグ優勝確率53.71%。
2位のマンチェスターシティが27.63%で、その差はかなり大きい。
さらにチャンピオンズリーグでも、アーセナルの優勝確率はバイエルンを5%上回ると紹介された。
ここだけ切り取れば、今年のアーセナルはかなり強いという話になる。
ところが、アルテタが興味を示したのは、その数字ではなかった。
「明日の夜に勝つ確率が、もっと重要だ」
そして最後に、少し笑いを含ませながらこう続けた。
「降格する確率が0.05%ある」
この返しが面白い。
優勝確率53.71%を聞かされて、
普通ならもちろん嬉しい、とか、自信がある、と話してもおかしくない。
でもアルテタは、明日の1試合へ話を戻した。
大きな数字を見せられた時ほど、目の前の小さな数字を見る。
それが、この会見のアルテタらしさだったように思う。
もちろん、スーパーコンピューターの数字は公式記録ではない。
各チームの戦力や残り日程などをもとに、
シーズンを何度もシミュレーションして算出される計算上の予想にすぎない。
だから53.71%だからといって、
アーセナルが半分以上の確率で優勝することが決まっているわけではない。
アルテタがそこに乗らなかったのは、むしろ自然だったのかもしれない。
ここからは、会見の内容を見ながら、自分でも少し数字を追ってみた。
すると、妙なことに気づく。
昨季、アーセナルでチーム最多の14得点を記録したヴィクトルギョケレシュ。
今季はここまでリーグ戦3試合のうち1試合に出場したものの、先発は0回。
そして、この日の約18分の会見で、
アルテタ監督がギョケレシュの名前を口にすることは一度もなかった。
怪我人の話では、サリバ、ティンバー、モスケラについて話している。
ウーデゴールについても話す。
ハヴァーツについては、かなり長く話す。
コンサについても、長く評価している。
それなのに、昨季チーム最多得点のストライカーについては、一言もない。
もちろん、これだけで何かを断定することはできない。
起用されない理由をアルテタが説明したわけでもない。
怪我だとも言っていない。
戦術上の理由だとも言っていない。
ただ、昨季いちばんゴールを決めた選手が、
今季はまだ0先発で、しかも会見では話題にすらならなかった。
この落差は、やっぱり気になる。
昨季14得点。
今季3試合で0先発、0得点。
数字だけなら、それだけの話だ。
でも会見まで重ねて見ると、少し違って見えてくる。
出ていない選手ではなく、
出ていないうえに、語られてもいない選手
になっているからだ。
・昨季14得点の選手たちの、今季3試合
ギョケレシュ(昨季14得点) 1試合0先発・0得点
エゼ(昨季7得点) 1試合0先発
スビメンディ(昨季38試合5得点) 2試合0先発
マドゥエケ 1試合0先発
メリーノ 2試合0先発
・今季3試合すべてに先発している10人
ラヤ/ベンホワイト/ガブリエウ/カラフィオーリ/ルイススケリー
ライス/ウーデゴール/ハヴァーツ/サカ/ツォリス
そして、その一方で、アルテタが最も長く語った攻撃陣の名前がハヴァーツだった。
ハヴァーツについて記者が聞いたのは、とてもシンプルな質問だった。
「彼のベストポジションはどこなのか?」
ところがアルテタは、ポジションそのものを固定して答えなかった。
ベストなポジションは、その試合が何を求めているか、その日にチームが何を求めているかによって変わる。
9番でプレーすることもできる。
でも、9番でプレーするといっても、ボールを持っている時と持っていない時で役割は変わる。
セットプレー、トランジション、ハイプレス、相手GKの利き足。
いろいろな要素が、最初に置いた9番という場所を別のものへ変えていく。
つまり、アルテタにとってハヴァーツはこのポジションの選手と一言で括れる存在ではない。
しかも、ただ器用だから評価しているわけでもない。
アルテタが挙げたのは、ゲームを理解する能力だった。
「彼はゲームの5秒、10秒先を読んでいる」
この言葉が印象的だった。
迷ってから動くのではなく、先に状況を理解している。
だから周りの選手を良くする。
その上でゴールも決める、チャンスも作る、運動量もある。
今季のハヴァーツは3試合3先発2得点。
アーセナルのリーグ6得点のうち2点を決めている。
昨季14得点のギョケレシュがまだ先発0回なのに対して、
今のアルテタが長く説明している9番はハヴァーツだった。
今季のアーセナルは、3試合で1失点。
チャンピオンズリーグを含めても、ここまで4試合で失点は1。
3試合がクリーンシートだ。
数字だけ見れば、かなり安定している。
でも、その裏側を見ると、アルテタは「後ろが本当に、本当に薄かった」と話している。
サリバとティンバーが今季まだ出場しておらず、モスケラにも問題があった。
その穴を埋める形で加入したコンサについて、
アルテタは人をまとめる力、個性、リーダーシップを高く評価していた。
そして現在まで、「本当に素晴らしい仕事をしている」と語っている。
この話は、単純に控えが頑張っています!で終わらない。
主力が欠けているのに、結果として守備はかなり安定している。
ただし、まだ4試合だ。
だからサリバもティンバーもいなくて大丈夫と結論づけるのは早い。
むしろ気になるのは、これからだ。
アルテタ自身も、昨年の課題として
「同じライン、時には同じポジションに2人、3人と怪我人が出たこと」を挙げている。
さらに現代のサイドバックには「とてつもない身体的な要求」があるとも話している。
好調なスタートの裏側で、アーセナルは相変わらずコンディション管理との戦いをしている。
・アーセナルの今季4試合(リーグ3+CL1)
失点 1
無失点 3試合
この間、サリバとティンバーの出場は0分
・今季3試合の最終ライン
ベンホワイト 3試合3先発
ガブリエウ 3試合3先発
カラフィオーリ3試合3先発
ルイススケリー3試合3先発
モスケラ 2試合2先発
コンサ 2試合1先発
今夏、アーセナルからは前線の選手たちがチームを離れた。
記者はガブリエウジェズスやマルティネッリの扱いについて、かなり踏み込んだ質問を投げた。
ジェズス本人の移籍後のコメント。
イアンライトが感じたというマルティネッリへの扱い。
かなりデリケートな話だ。
それに対してアルテタは、ジェズスとは個別に話をしたと説明した。
そして、その時に交わした言葉について、
「すべて感謝に関するものだった」
と話している。
ここも、個人的には興味深かった。
移籍した選手について、あの判断が正しかったと言い張るわけでもない。
誰が悪いかを争うわけでもない。
むしろアルテタが重視しているのは、
3か月後、6か月後にドレッシングルームでどういう関係が残っているかだった。
サッカーでは、移籍の瞬間だけを切り取れば出した側、出された側という関係になってしまう。
でも、一緒に仕事をした時間まで消えるわけではない。
だからこそその後も関係が良いことが重要なのだろう。
・この夏アーセナルを離れた3人
ガブリエウジェズス(背番号9) 昨季3得点 → バルセロナ
マルティネッリ(背番号11) 3シーズン在籍
トロサール(背番号19) 昨季6得点6アシスト
・今夏アーセナルに入った4人
コンサ アストンヴィラから
ギマランイス ニューカッスルから
ツォリス クラブ・ブルッヘから
メリエ リーズから
この考え方は、後半の競争の話ともつながっている。
アルテタは、ただ競争するだけでは足りないと言った。
互いに協力する。
役割を理解する。
チームメイトの成功を喜ぶ。
競争と協力、その両方が必要だという。
強いチームを作るというのは、単純に良い選手を11人並べることではない。
誰かが出られない時にどう振る舞うか。
誰かがチームを去る時に何を残すか。
そこまで含めてチームなのかもしれない。
優勝確率は53.71%。
リーグ3連勝。
4試合で1失点。
昨季の王者。
数字だけ並べれば、かなり順調だ。
それでもアルテタが口にしたのは、明日の1試合だった。
昨季、サンダーランドとのアウェイゲームでは2-2。
勝点を落とした。
しかもアルテタ自身が「最後の数分で」と振り返っている。
だから今回も、相手の強みをどう消すか、試合をどこへ持っていくかを準備すると話している。
面白いのは、ここまでの会見を全部つなげると、一つの考え方が浮かんでくることだ。
53.71%より0.05%。
シーズン全体より明日の試合。
肩書きより、毎日のトレーニング。
ポジション名より、その試合で何が必要か。
競争だけでなく、協力。
そして、昨季の勝点2を落とした記憶。
アルテタはずっと、今に話を戻していた。
だから、サンダーランド戦で見たいものも一つだけにしたい。
昨季14得点のストライカーが、今季まだ先発0回。
会見では名前すら出なかった。
それでも、もしピッチに立てば、話は一気に変わる。
逆に、またベンチから始まれば、なぜ?という疑問は残り続ける。
もちろん、その答えをこの会見から読み取ることはできない。
だからこそ、試合を見るしかない。
開幕3連勝の強いアーセナルを見るのではなく、
まだ何も確定していないアーセナルを見る。
それが、今回のサンダーランド戦を少し面白くしてくれる気がする。